土地や建物などの不動産を取得した場合、所有者は登記を行うことでその所有権を第三者に主張できるようになります。相続によって取得した場合も事情は同様で、これまで故人の名義であった不動産を新たに相続人の名義に変更します。この手続きを、相続登記といいます。仮に相続登記を行わなかったらどうなるかというと、日常生活においては特段の支障は生じません。

たとえば家を相続した場合、相続前からそこに住んでいたとしても、あるいは相続後に新たに移り住んできたとしても、そのまま暮らし続けることができます。しかしながら、その物件を売ろうとしたり、物件を担保にお金を借りようとしたりする場合などには、問題が発生することとなります。というのも、名義の変更をしていないと相続人が正当な所有者であるかどうかが明確でないため、買取を拒否されたり、融資を断られたりしても異議を申し立てることができないからです。こうしたことから、相続登記は義務化はされていないもののトラブルを未然に防ぐ目的から必ず行うことが推奨されてきました。

さらに2021年に行われた法律改正では、相続登記の義務化が民法において明確に規定されることとなりました。それによれば、相続によって所有権を取得した者は、相続の開始があったことを知り、なおかつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転登記を申請することが義務付けられています。この義務化は、2024年4月1日から実際に適用されます。