いざ相続が発生した場合、できることなら相続税の支払いは少なく抑えたいもの。しかし税務署の目をごまかすのはそう簡単ではなさそうです。国税庁には死亡通知がすべて入ってくる仕組みになっており、課税データと突き合わせれば生前の収入がわかり、相続税の課税対象かどうかを判断できるようになっています。収入や資産が多いにもかかわらず無申告だったり、申告額が不自然に少なかったりすると、税務調査に入られることになります。

毎年申告漏れのニュースがメディアを賑わしますが、意図的かどうかに関わらず、申告漏れとして指摘されるケースの多いのが、いわゆる「名義預金」です。名義預金とは、たとえば妻や子、孫の名義であっても、管理、運用していたのが死亡した父親だった場合、実質的には父親の遺産とみなされて相続税の課税対象となります。父親が口座を開設し、通帳や印鑑を自分で保管していたというようなケースです。贈与だったと主張しても「あげた」「もらった」と両者の意思を証明しなければならないなど、税務署を説得するのは簡単ではありません。

課税逃れに目を光らせている税務当局ですが、最近は特に海外資産に関する調査が厳しくなっています。日本は二重課税の調整や脱税防止などを目的に84ヵ国租税条約を結んでいて、税務当局は、このネットワークを通じて日本人の海外預金口座などの状況を把握できます。富裕層を中心に海外に資産を移す動きが活発化していますが、海外と日本との間でのお金の動きに関しては、年々監視が厳しくなっていると考えたほうがいいでしょう。