遺産相続の問題についても共通して言えることですが、冠婚葬祭は戦いです。しきたりという一応の原則はあるものの、それに対してどこまで忠実に従うべきなのか、しきたりにも幅があるため、解釈が分かれます。そのため、冠婚葬祭にかかわる人間は、なるべく自分に有利になるように解釈しようとします。冠婚葬祭には、家族や親族といった当事者に極めて近い立場にある人間がかかわってきますので、解釈をめぐる対立は深刻なものになり、そこに激しいバトルがくり広げられることになります。

こうした局面において求められるのは、戦いに臨む覚悟です。しかも、戦いは複雑なものなので、戦略も戦術も必要です。特に現代の社会における介護は、その先に死や葬儀、遺産相続というどれも、お金がからむ問題が控えているので、あらかじめ相当な覚悟を決めておかなければなりません。覚悟がなければ、この厳しい戦いに勝利することはできません。

遺産相続と介護ということでは、もっぱら介護した人間には、しなかった人間以上の貢献が認められ、より多くの相続が認められることになりますが、それがどの程度の割合になるのかは簡単には判断できないことです。例えば、老母を看取った妹と、介護もせず介護費用もビタ一文も出さなかった兄で話し合っても、おそらくは結論が出ず、感情的になって問題がもつれるということは大いにあり得ます。最後は気持ちと気持ちの勝負になります。その点では介護をした人間は強いとも言えますが、介護をしなかった兄弟も相続の権利があります。

介護をした人は、介護の貢献を認めてもらうことで、兄弟よりも少し多めに相続するという線で決着させるのがよいでしょう。